2024年 8月 6日

太陽が強くなり、日も長くなる夏、紫外線が強くなるけれど、シミをこれ以上増やさないようにしませんか? 明るい季節になってきて、シミが気になってきてはいませんか? 原因・症状・治療法を皮膚科専門医がわかりやすく説明します。

「気になるシミがある」
「気が付いたら、どんどんシミが増えている」
「シミが濃くなってきて、メイクで隠せなくなってきた」
「美白の化粧品は使っているけども・・・」
加齢の症状の中でも、人に隠せないシミ。
場所が顔だけに、人に気づかれてしまいますよね。
一方で、ネット検索しても何をすればいいのかわからない…
そんなあなたが少しでも正しい情報を得られるように皮膚科専門医が詳しく説明します。
この記事を書いている人
皮膚科専門
北 和代(きた かずよ)
(資格)
・日本皮膚科学会 専門医
(所属)
・日本美容皮膚科学会 日本抗加齢医学会

シミってそもそもどんな病気?

「シミが多くて悩んでいます。」と受診される方は、色がついているものを全てシミと言われます。
ですが、シミには色々なタイプがあります。(今回は茶系のシミのみ記載しています。)

 

加齢とともにでてくるものの多くは老人性色素斑です。顔をこするなど、間違ったスキンケアでできたものやにきびあとは炎症後色素沈着、小さい時からある、左右対称の小さい褐色班は雀卵斑(そばかす)で、遺伝的なものですので、家族にも同じ症状がある方が多いです。

 

20歳代以降に、顔(ほほや、おでこ、口周りなど)に左右対称性に出てくる淡褐色から淡灰色の色素班で、紫外線や女性ホルモンの影響など色々な原因で生じるものを肝斑といいます。

 

色素班は混在していることもあり、明確に見分けることが難しい時もあります。

 

皮膚の構造

下記は皮膚の構造の一部です。

 

 

シミによる病態の違い

シミは、表皮の基底層、または真皮の、どこで色素が増強しているかで、病態の違いがあります。

シミは周りの正常な皮膚と比べ、色素が増強(増加)している状態です。

 

・メラノサイト:色素細胞

・メラノソーム:メラニン顆粒を作ります

・ケラチノサイト:角化細胞。表皮の95%以上を占める。

基底層から有棘層→顆粒層→角質層へ移動し、最終的に死細胞である角層細胞になり、外界へ脱落します。

 

1個のメラノサイトは36個のケラチノサイトにメラニン顆粒を供給しています。

 

シミは主に病態ごとに下記に分類されます。(ここでは茶系のシミのみ記載しています。)

①表皮基底層のメラノサイト数の増加:老人性色素班

②表皮メラノソームの増加、真皮メラノソームの滴落:肝斑(表皮のメラニン過多+真皮のメラノファージ*によるメラニン沈着)、雀卵斑(基底層のメラニン増加)、老人性色素班、炎症後色素沈着

③メラノサイト内もしくはケラチノサイト内メラノソームが異常に蓄積:肝斑(基底層および、すぐ上層の角化細胞内のメラニンの増加)

④真皮メラノソームの増加:炎症後色素沈着、老人性色素班

⑤色調に関与する内因性、外因性の沈着

 

*メラノファージ:貪食作用をもつ生体内の大型細胞をマクロファージという。

表皮から真皮に滴落したメラニン顆粒は組織球に捕食され、茶褐色に観察されるようになった組織球のことを言う。

 

老人性色素班

紫外線(UV-B)によって色素細胞(メラノサイト)が活性化され、表皮の基底層で過剰にメラニンが作られ、蓄積されることで起こります。(角化異常も起こすので徐々に分厚くなり、老人性のイボ:脂漏性角化症が生じることがあります。)

 

炎症後色素沈着

表皮または真皮にメラニンが蓄積しています。表皮の色素増強によるものは改善しやすいですが、真皮の色素増強によるものは改善しにくいです。

 

雀卵斑(そばかす)

遺伝性ですが、日光により夏に症状が悪化します。基底層のメラニンの増加がみられます。先天的に顔面のメラニン量を保つ働きに異常があると考えられています。

 

肝斑

紫外線、ホルモンバランス(妊娠など)、薬剤(ピル、抗けいれん薬など)、慢性的にこするなどの刺激で皮膚のバリアを破壊し色素沈着を起こす、精神的ストレスなど色々な原因で生じます。

 

表皮にメラニンが多い、または表皮のメラニン過多に加え、真皮のメラノファージによるメラニン沈着が目立ちます。肝斑では基底層が消失もしくは薄くなっており、メラノサイトが真皮へ滴落し、メラノファージが定着します。また、真皮には光線性弾力繊維の変性がみられます。

 

原因は?

老化(年齢、紫外線による光老化)

紫外線(UVB)で色素細胞が増殖、活性化されます。紫外線は1年中あります。

 

夏場だけの対策では不十分です。曇りの日でも晴れている日の半分以上の紫外線が降りそそいでいます。

年齢を重ねるほど長期に渡った紫外線の蓄積がありますので、老人性色素斑ではメラニンを多く含むケラチノサイトが増加します。皮膚の老化を進行させ1番の原因は、紫外線によって皮膚の中で生じる活性酸素と言われています。

 

ホルモンバランス

肝斑は、妊娠で悪化がみられる、閉経後に改善するなど女性ホルモンによる色素細胞の活性化がみられます。

 

薬剤

避妊薬(ピル)や抗けいれん薬、抗生剤など、光毒性のある薬剤なども肝斑の原因になります。

 

こするなどの間違ったスキンケア

摩擦による皮膚ダメージや合わない化粧品などの使用を続けると色素沈着、皮膚バリア機能の損傷で色素増強が起こり得ます。お肌全体のくすみや、バリア機能を壊すことによる乾燥でシワが増えたり、肌が過敏になります。色素斑の治療を行う際には、良い結果をもたらすためにも、間違った習慣を直していく必要があります。

 

どんな症状?

老人性色素班

ほとんどの40-50歳以上の男女に生じます。顔や手、腕など紫外線があたりやすいところに生じる褐色班です。小さいもの:小斑型(そばかすの様に顔面に多発)と大きめのもの:大斑型(貨幣大くらいまでの大きさのもの、表面がかさかさしていることが多い)、白斑黒皮症型(白いところと色素班が混在しているもの、手や腕に好発します。)があります。比較的境界がはっきりしており、形は不定形です。

皮膚の角化細胞(ケラチノサイト)の増殖がみられます。一部のものは時間が経過すると、色素班のところに、老人性角化症(イボ)が生じてきます。

 

雀卵斑(そばかす)

小学生の頃から生じます。加齢とともに数が増え、目立ちやすくなります。両ほほ、鼻、目のまわり、胸部、腕、手に「雀の卵の模様に似た色素班」という病名の通り、直径2-3mmの茶色から褐色班が多発しています。遺伝素因があり、ご家族にも同じ症状の方がいます。紫外線の強くなる夏に悪化します。また、こするなどの摩擦による刺激でも悪化します。徐々に薄くなると言われていますが、消えることはなく、年齢を重ねると老人性色素班のようにみえてきます。

 

肝斑

30-50歳代のアジア人女性に多く見られる色素班です。境界明瞭な淡褐色斑が、おでこや頬、口周りに左右対称性に生じます。

原因はまだ明確になっていませんが、多くの因子が関与していると考えられています。紫外線や、摩擦などの刺激、化粧品や炎症、また女性ホルモンの関与(妊娠2-3か月で始まり、出産後に徐々に薄くなりますが、閉経後まで持続することもあります。)、心理的なストレスなどが悪化因子です。肝斑に雀卵斑が合併することもあります。化粧品による接触皮膚炎(かぶれ)を合併することが多いとされています。

 

診断方法は?

発症年齢や分布が大切

上述したようにシミにはいくつかの種類があります。見た目はよく似ていても、全く違う種類のこともあり、また複数のシミが重複していると、さらに鑑別は難しくなります。

シミが出現した年齢や、シミの分布などではっきりとわかるものもあれば、いつ頃からあるのか覚えていない、シミが多発していて鑑別が難しい、などの場合もあります。

こするような間違ったスキンケアを行なっていることが原因で生じたものは、例えば肝斑のように見えていてても、正しいスキンケアを行うだけで改善することもあります。

皮膚をとる検査(皮膚生検)で診断を確定することは可能ですが、シミが多発していたり、メスを使わない美容治療をご希望されている方に、麻酔をして皮膚の一部を切除し、検査をするのは現実的ではありません。

 

悪性のものとの鑑別にはダーモスコピーが有効

一見シミに見えていても、ある一定以上の年齢になると、一部に悪性のシミが生じていることもあります。

形がいびつであったり、濃淡のあるものは悪性の可能性を否定するためにダーモスコピーで拡大し確認します。少しでも悪性の可能性がある場合は、皮膚生検などの精査が必要です。

 

治療法は?

病態によって異なる

老人性色素班

レーザー治療が主体になります。IPLなどの光治療も有効です。メラノソームを多くもっている異常なケラチノサイトを物理的に除去します。メラノソームをつくるメラノサイトの働きを抑え、メラニンの排出を促すためにハイドロキノンの外用も行います。

 

雀卵斑(そばかす)

レーザー治療(レーザートーニングやスポット照射)やIPLなどの光治療が適応になります。治療に反応しますが再発しやすく、紫外線の強い夏などに色調が濃くなります。

 

肝斑

他のシミとは病態が異なります。(メラノサイトの活性化によるメラニンの合成が過剰な状態)また、はっきりとした原因は明確になっていないため、レーザー治療や光治療ではなく、まずは内服薬での治療が必要です。

メラニンの産生を抑えるトラネキサム酸の内服、今あるメラニンを薄くする美白外用剤や、イオン導入、ピーリングなども有効です。レーザートーニングが有効との報告もありますが、濃くなったり色素が抜けたりの報告もあるので慎重に行う必要があります。

 

また、こするなどの刺激も誘因になりますので、スキンケアの改善も必要です。

紫外線による悪化がありますので、紫外線対策がきちんとされているかの確認も重要になります。

 

また、肝斑は根治が難しいため、長く経過をみていく必要があります。

 

まとめ

一言にシミと言っても、タイプが異なるものが混在していたり、色の濃淡や、分布、肌タイプによって治療法も異なります。

最適な治療法があっても、その方の職業や生活環境なども考慮して、治療を選択しする必要があります。また、予防や施術後のケア、治療効果の維持として、普段のスキンケアの方法や習慣の改善、維持、紫外線対策が最も重要です。

 

この記事が皆さんにとって少しでも有益な情報となり、お役に立てれば幸いです。

 

引用:

最新皮膚科学体系8 色素異常症

最新美容皮膚科学体系2 しみの治療

あたらしい美容皮膚科学

美容医療を受けてみたいと思ったときに読む本



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