「学生時代にニキビがひどかった。自分の子供も最近ニキビが目立ってきた。」
「今までなかったのに、急にニキビが増えてきて、鏡をみるのも億劫。」
「ニキビの薬を買ったり、処方されたけど、治らない。」
「ニキビに効く化粧水などを試したけど、やっぱりニキビができる。」
ニキビは青春のシンボル。などという言葉もありますが、(ご存知ない世代の方もいらっしゃるかも?)小学生から40代以上の世代まで、ニキビができたと受診されます。
なぜできるのか?治療しても消えないのはなぜなのか?どんな治療が自分には合っているのか?
今まさにニキビに悩んでいるあなたが、少しでも正しい情報を得られるように皮膚科専門医が詳しく説明します。
一般的には、思春期の方の顔、胸、背中などの脂漏(しろう)部位の毛孔にできる慢性の炎症性の病変です。
ニキビは、色々な原因によって起きます。下記に挙げている色々な因子が複雑にニキビの発症に関与しています。
思春期のホルモンバランスの影響で皮脂腺の機能が亢進し、角化の異常や細菌感染が起きやすくなります。
脂腺性毛包にニキビはできます。皮脂が細菌によって分解され、遊離脂肪酸が発生します。これが毛漏斗部を刺激し、角化が起きます。(毛漏斗部の角化異常:脂腺性毛包の毛漏斗部は角質が剥がれやすく、毛包管を閉塞しやすい。)
そこに体質や洗顔の不十分による汚染で、角質がさらにたまり、毛漏斗部がふさがれ、面ぽうが形成されます。
先ほど述べたように、毛漏斗部の常在菌であるP.acneが、皮脂に含まれる成分を分解して、遊離脂肪酸を生成、これが毛包を破壊して炎症反応を引き起こします。また細菌自身も毛包を破壊して炎症を誘発します。
細菌感染
+
遺伝性因子 年齢 食事 便秘 ストレス 化粧品などの外的因子 皮脂分泌の亢進 男性ホルモンなどの内分泌的要因 毛包虫
ニキビができる時は、面ぽう(コメド)が最初にできます。
毛孔が開いて黒く見える(黒色面ぽう:開放面ぽう)ものや、皮膚内に黄色や白色の小さい、できものとして見える(白色面ぽう:閉鎖面ぽう)があります。
生後2週間前後から新生児の顔面に小さく赤い炎症のあるニキビができます。2−3ヶ月で自然に消えます。母親由来のホルモンの影響とされ、新生児の20%で生じます。
直径1−3cm程度の、重症のニキビや瘢痕(にきびあと)が顔面や背中に多発したものです。
ステロイドのぬり薬や飲み薬を使用した場合、開始2週間前後で胸などに毛孔に一致した小さく赤いニキビができることがあります。
毛包虫(ニキビダニ)によりニキビができます。成人女性で治りにくいニキビは、毛包虫性の可能性があります。
ニキビの初発部位です。低年齢層はほとんどが、このタイプです。髪の毛による刺激も悪化因子になりますので、前髪がおでこにかかっている方には、ご自宅にいる時は前髪をあげるようにお伝えしています。
赤色丘疹、膿疱(のうほう)などの炎症性のものが多発します。20歳代以降に多いニキビです。月経前に悪化するタイプ(月経前増悪型)は30歳代まで続くことが多いです。
・赤色丘疹・・・直径1cm以下の盛り上がった毛孔一致性のニキビ。押したら少し痛みがあります。
・膿疱・・・赤色丘疹の中央に黄色の膿疱(水ぶくれにウミがたまったもの)があり、ウミや汁(滲出液)がある。軽度の痛み、圧痛があり、治る過程で、色素沈着、かさぶたを生じます。
白色面ぽう(閉鎖面ぽう)が完全につまると嚢腫、結節などの大きいかたまりのあるニキビを作ります。
アイスピック型の点状陥凹、ローリング型(皿状)、ボックスカー型と呼ばれる形があります。
あごや胸などにできやすいです。元々のニキビの範囲を超えて不整な形で盛り上がります。自然に軽快することはありません。
1993年以前は、硫黄製剤(イオウカンフルローション)や自家製剤(クリニックや病院などで調合したもの)のみでした。
1993年に抗菌薬(ナジフロキサシンクリーム)が発売。
2002年に抗菌薬(クリンダマイシンリン酸エステル)が発売。
抗菌薬のため、炎症を起こした赤いニキビに効果があります。ニキビを予防する目的(再発の抑制)では使用できません。
2008年 に∗レチノイド作用をもつ外用剤(アダパレン)が発売。
毛穴のつまり(角化異常による毛包漏斗部の閉塞)を改善する外用薬です。
乾燥や皮むけ、刺激感、赤みが出やすいですが、1ヶ月程度で慣れてきます。ぬる量を減らす、保湿剤を一緒に使うことで、副作用をやわらげることができます。また、使い続けることでニキビの再発を抑制することが可能です。
∗レチノイド・・・トレチノイン(レチノイン酸)を含むビタミンA誘導体。美白効果、ターンオーバー(表皮の生え替わり)促進効果があるが、皮膚刺激症状が強い。
2015ー6年 過酸化ベンゾイル含有の外用剤が発売。
抗菌作用と角層剥離作用(ピーリング)で、面ぽう(コメド)、炎症を起こしたニキビに効果があります。使い続けることで、ニキビの再発を抑制し、ニキビができにくい肌を維持、新しいニキビあとを増やさずにすみます。
抗菌薬・・・炎症性のニキビに対して効果があります。
漢方薬・・・炎症性のニキビ、コメド、ニキビあと、瘢痕(ケロイド)などに対して効果が期待できます。
トラニラスト・・・瘢痕に対し効果があります。
小麦や大麦などの穀類に含まれてる飽和ジカルボン酸。海外ではニキビ治療薬として推奨されていますが、日本では保険適応ではありません。お化粧品の位置付けで販売されており、当院でも取り扱っています。ニキビや赤ら顔の方におすすめしています。
毛包漏斗部の角化の抑制作用、抗菌作用、抗炎症作用、抗酸化作用があり、ニキビができるのを防ぐ作用、炎症のある赤ニキビを治す作用があります。
薬剤を皮膚に塗布し、角層のみ、または毛包漏斗部までを含めた皮膚の表面を剥離し、毛穴のつまりを改善、たまっていた皮脂や角化物を除去します。抗炎症作用やキメの改善が期待できます。
炎症性のニキビに効果があります。ニキビ菌に対する殺菌作用または脂腺の機能を低下させることでニキビ治療に有効とされていますが、相反する報告もあり、現状では有効性について明確にはなっていません。
海外では皮脂腺を破壊して、ニキビに効果を発揮するレーザーが承認されていますが、日本未入荷です。
海外または一部の自費診療では、経口避妊薬(いわゆるピル)やスピロノラクトンなどのホルモン療法(降圧剤、浮腫治療薬)、イソトレチノイン内服(ロアキュタン、イソトロイン、アクネトレント)などの選択肢もありますが、現状、日本では有効性の確立がなされていません。
イソトレチノインはビタミンA誘導体の一種で、皮脂分泌の抑制や角化を抑制し毛穴の詰まりを改善する作用があります。海外では重症なニキビ(集簇性ざ瘡)の治療として行われていますが、日本では保険診療での認可はありません。
副作用として、肌、粘膜の乾燥、肝機能障害、血中コレステロール値の上昇、重篤な副作用として胎児の催奇形性があります。
内服中に妊娠した場合、流産や胎児奇形の可能性がありますので、内服中は避妊する必要があります。その他、精神症状や紫外線感受性の亢進、ニキビ治療でよく使う抗菌剤との併用はできないなど注意事項が多い薬剤です。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、
・経口避妊薬については、他の治療で改善が不十分で、内服することで避妊につながる治療であることを容認された場合に使用してもよいが、推奨はしない。血栓形成や不正性器出血の副作用があることに関し十分な説明と同意が必要とされています。
・スピロノラクトンの内服は推奨されていません。
・1日2回の洗顔・・・洗顔料やクレンジング剤が残らないように洗い流す必要がありますが、ゴシゴシとこする洗顔は肌にダメージを与えます。手のひらの皮膚が見えないくらい泡だてて、泡をつぶさずに、円を描くように優しく洗顔します。髪の生え際やあご、鼻のまわりは洗い残しが多くなりやすい場所ですので、より丁寧にすすぎます。毛穴や毛穴づまりが気になるからとゴシゴシ洗ったり、押し出したりするのは良くありません。
・ノンコメドジェニックテスト済み(コメドができにくい)の化粧水などを使用する。
皮脂が多いからと洗いすぎたり、また保湿が足りないと肌の状態は悪化します。肌に負担をかけないように、こすらないように洗顔し、化粧水やクリーム、日焼け止めなどを塗る時は、手のひらや指先で、押しあてるように、なじませる方法をおすすめしています。
コットンを使用してのケアなど、こすって行うスキンケアは、皮膚にダメージを与え、にきびあとなど炎症のあるところに刺激を加えてしまい、いつまでも赤み、にきびあとが残る原因にもなります。
紫外線対策は皮膚の老化、ニキビあとを残さないため、またピーリング作用のある外用剤を使用中、ピーリング施術中などの場合には必須です。
クリームタイプ、リキッドタイプのファンデーションは毛穴をつめたり、こすることにもつながるため、パウダータイプのファンデーションが推奨されています。
メイク用品は各々テクスチャーや色味、効果など好みがありますので、絶対ではありませんが、ブラシやパフ、スポンジなどはこまめに洗って、清潔を保つ、または新しいものとの交換の必要があります。クッションファンデーションは特に注意が必要と考えます。
ニキビを隠すために、コンシーラーなどでこするのも良くはありません。カラーコントロールを行いながらも、お肌に優しく、にきびあとに効果のある製品もありますので、そういったものを使用するのもおすすめです。
食事や睡眠、便秘などの胃腸の状態、メイク、スキンケア、入浴方法や洗髪の方法などもニキビの原因になりますが、できることから、できる範囲で、気にかけてみる、気を付けてみるだけでも十分だと思います。
ニキビに悩んでいる方は、今まで全くニキビはなかったのに、急にでてきて、治らず困っている方、治療して良くなってもまたできる方、ニキビはできなくなったけど、ニキビあとに悩んでいる方など様々です。
保険診療でできる治療、自費治療での治療など選択肢がたくさんあります。また、その方の年齢や、生活スタイル、食事内容、使用しているスキンケア製品なども関わりがあります。
この記事が皆さんにとって少しでも有益な情報となり、お役に立てれば幸いです。
引用:
最新皮膚科学体系17 付属器・口腔粘膜の疾患
最新美容皮膚科学体系2 しみの治療
あたらしい美容皮膚科学
皮膚科学 第10版
あたらしい皮膚科学 第3版
日本皮膚科学会 尋常性痤瘡治療ガイドライン2017
皮膚疾患最新の治療2023−2024
美容医療を受けてみたいと思ったときに読む本
ニキビハンドブック-ニキビ患者様のために-
ニキビあとを残さないためにできること